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RESULT2023年11月号 Vol. 34 No. 8(通巻396号) 最近の研究成果 エアロゾル中の溶存鉄の起源を探る -海洋表層への鉄供給メカニズムの解明を目指して- --> 坂田昂平(地球システム領域地球大気化学研究室 特別研究員) 北太平洋をはじめとする高栄養塩・低クロロフィル海域(HNLC海域*1)における生物一次生産(=植物プランクトンの光合成)は微量栄養塩である溶存鉄の不足により制限されている。HNLC海域に溶存鉄が供給されることにより生物一次生産が活性化され、炭素や窒素、硫黄などの生物地球化学的循環*2に影響を及ぼす。特に炭素循環は大気中の二酸化炭素の海洋吸収などの全球的な気候に影響を及ぼすプロセスとも関与しており、表層海水への溶存鉄の供給ルートを理解することは全球的な気候制御システムを理解する上でも重要となる。 *1HNLC海域: 硝酸塩・珪酸塩・リン酸塩などの主要栄養分は多量にあるにもかかわらず、 それと見合う植物プランクトンが存在しない海域(貧栄養塩海域と比較すると、HNLC海域の植物プランクトン濃度の方が高いことが一般的)。植物プランクトンの繁殖は主に微量栄養塩である溶存鉄の不足により制限されている。代表的なHNLC海域は太平洋亜寒帯域、東部太平洋赤道域、南極海。 *2生物地球化学的循環: 各元素循環が地球にある大気圏、水圏、岩石圏、生物圏などを経由して循環することを指す。実際には、個々の元素が独立しているわけではなく、様々な元素が相互作用しながら地球の中を元素が循環している。近年では人類圏(anthroposphere)も含めて考えることもある。 表層海水中の溶存鉄の重要な供給源として、鉄含有エアロゾルの海洋沈着が挙げられる。鉄含有エアロゾルは主に砂漠地域などに由来する鉱物粒子と人為的活動により放出された鉄(以下、人為起源鉄)の2つの起源を持つ。鉱物粒子由来の鉄の放出量(37 ‒ 140 Tg·Fe/year)は人為起源鉄(0.7 ‒ 2.1 Tg·Fe/year)と比べて多いが、人為起源鉄は鉱物粒子よりも高い溶解性を有していると考えられており、両者ともに表層海水中の溶存鉄の供給源となりうる。一方、エアロゾル中の溶存鉄に対する鉱物粒子および人為起源鉄の寄与率を定量的に評価した観測研究はほとんどない。 その理由として、エアロゾル中の溶存鉄を定量的に評価するための手法が確立されていないことがあげられる。特に海洋エアロゾル中の鉄をはじめとした金属元素濃度は極めて希薄で、その分析にはクリーンルーム内での超微量分析の技術が必要不可欠である。そのため、海洋エアロゾル中の溶存鉄の起源を定量的に評価するためには、なるべく簡単かつ高感度な手法を構築する必要がある。 そこで筆者らは、鉱物粒子(主にアルミノケイ酸塩)と人為起源鉄(鉄酸化物)の化学種や元素組成の違いに着目した。アルミノケイ酸塩の主成分はケイ素やアルミニウムであるのに対し、鉄酸化物は鉄が主成分なうえに他の金属元素は不純物としてわずかに含まれる程度である。そのため、両者から溶け出した鉄とアルミニウムのモル濃度比([d-Fe]/[d-Al]比)に違いがあると想定し、鉄含有エアロゾルの排出源試料中の[d-Fe]/[d-Al]を調べた。その結果、人為起源鉄は鉱物粒子よりも有意に高い[d-Fe]/[d-Al]を持つことが分かった(図1a)。また、鉱物粒子の[d-Fe]/[d-Al]は風化過程の違い(超純水や酸 vs. 有機酸)によってもその比を変化させることが分かった(図1a)。 この比を使用して、2013年に広島大学で採取したエアロゾル中の溶存鉄の起源推定を行った。その結果、粗大粒子(粒径が1.3 mm以上)の[d-Fe]/[d-Al]比は鉱物粒子と類似していたのに対して(図1b)、微小粒子(粒径が1.3 mm以下)では人為起源鉄に由来する高い[d-Fe]/[d-Al]比が見つかり、それらが鉄の溶解率*3と相関していることがわかった(図1b)。このことから、微小粒子中の溶存鉄には人為起源鉄が寄与していることが明確になった。しかし、東アジア(日本を含む)のエアロゾルが北太平洋に到達する冬から春先における溶存鉄に対する人為起源鉄の寄与は平均で13.5%(最大で34.4%)であり、鉱物粒子が北太平洋に輸送される溶存鉄の重要な起源であることが示唆された。 *3鉄の溶解率 (%) = (水溶性鉄/(不溶性鉄+水溶性鉄))×100 図1 (a)鉄の排出源試料間における[d-Fe]/[d-Al]比の違い。(b)広島大学で採取した粗大粒子(水色の青丸)と微小粒子(黒四角)中の[d-Fe]/[d-Al]比と鉄の溶解率の関係。背景色と鉄の排出源との関係は以下の通り。 ピンク: アモルファス珪酸塩、黄色: 鉱物粒子(水や酸で抽出)、黄緑: 鉱物粒子(有機酸で抽出)、灰色: 人為起源の鉄酸化物。 先行研究により採取された海洋エアロゾル中の溶存鉄の起源推定を行った結果、太平洋と大西洋上のエアロゾルに含まれる溶存鉄の約10%が人為起源鉄に由来しており、海洋表層への溶存鉄の供給過程として人為的活動が無視できないことが分かった(図2)。一方で、鉱物粒子中の鉄が大気中の風化で可溶化することで、表層海水への鉄供給に寄与することも本研究から明らかとなった。今後、[d-Fe]/[d-Al]比を用いた溶存鉄の起源推定を様々な観測に応用すると同時に大気輸送中における鉄含有エアロゾルの風化過程に関する知見を深めることで、エアロゾル沈着を介した表層海水への溶存鉄の供給過程をより定量的に理解できることを期待している。 図2 これまでの研究でわかった海洋エアロゾル中の溶存鉄に対する人為起源鉄の寄与率。(a)が太平洋で、(b)が大西洋での結果。 ※この論文は、第一著者が広島大学に所属していたときの研究成果を主にまとめたものです。 本研究の論文情報 Measurement report: Stoichiometry of dissolved iron and aluminum as an indicator of the factors controlling the fractional solubility of aerosol iron – results of the annual observations of size-fractionated aerosol particles in Japan 著者: Sakata, K., Sakaguchi, A., Yamakawa, Y., Miyamoto, C., Kurisu, M., & Takahashi, Y. 掲載誌: Atmospheric Chemistry and Physics, 23, 17, 9815–9836 (2023) https://doi.org/10.5194/acp-23-9815-2023 坂田 昴平 SAKATA Kohei 特別研究員|地球システム領域地球大気化学研究室 2023年11月号 Vol. 34 No. 8(通巻396号) 国環研の研究データがもたらす社会的インパクトへの期待 髙澤哲也理事に聞きました オープンサイエンス時代における学術データや学術試料の利活用を推進するために 国立環境研究所公開シンポジウム2023「モニタリングから読みとく環境 ~次世代につなげるために~」での講演 【最近の研究成果】「灌漑」が地球環境に与える影響 【最近の研究成果】エアロゾル中の溶存鉄の起源を探る -海洋表層への鉄供給メカニズムの解明を目指して- 観測現場発 季節のたより[25]人里離れた地で人間活動の影響を測る 地球環境研究センターニュースVol. 34[2023年度]2023年11月号 Vol. 34 No. 8(通巻396号) サイトポリシー ソーシャルメディアポリシー お問い合わせ c National Institute for Environmental Studies

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