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長崎大学　副学長（地域教育連携担当）・教育学部教授中村典生 中村典生（なかむら のりお）先生 新学習指導要領の改訂や『We Can!』『Let's Try!』作成にも携わる。小学校英語教育学会（JES）副会長。主な著書に『小・中学校で英語を教えるための必携テキスト』（東京書籍）など。 『NEW HORIZON Elementary』年間評価計画の作成法 　評価・評定のことを考える際に必ず考えておく必要があることに「年間評価計画」があります。この年間評価計画を作っておかないと，「この観点のこの領域の評価をし忘れていた」などということが生じる可能性もあります。年間評価計画を作成する際の留意点は以下の通りです。 1．学期ごとに3つの評価の観点（知識・技能，思考・判断・表現，主体的に学習に取り組む態度）で評価する（評定を行う）ことを念頭に置く。 2．3つの評価の観点ごとの評価と，内容のまとまり（聞くこと，読むこと，話すこと（やり取り），話すこと（発表），書くこと）ごとの評価をまんべんなく行う。 　これらについては，3観点と5領域を組み合わせると，以下のように15項目について評価をする必要があることに関係しています。（指導要領では「聞くこと」「読むこと」「話すこと（やり取り）」「話すこと（発表）」「書くこと」の順に領域が記載されていますが，ここでは後に示す年間評価計画シートの順序に合わせて，音声技能の方を先に示しています。） 　1．については，各学期で3観点それぞれについて評定を行う根拠となる資料がないと評定が不可能になります。したがって，各学期の3観点それぞれについて「5領域のどれかで」記録に残す評価をする必要があります。 　2．については，15ある項目が，「結果的に」にまんべんなく評価されている必要があります。これは学期ごとではなく，学年でまんべんなく評価すると解釈します。 　以上を考慮して，『NEW HORIZON Elementary』（5・6年）の年間評価計画のサンプルを作成してみました。なお，ここでは小学校ではあくまでも音声中心の指導を行うことを考慮し，音声の技能（領域）である，「聞くこと」「話すこと（やり取り）」「話すこと（発表）」を，文字の技能（領域）である「読むこと」「書くこと」の上に配しています。 （5年生） （6年生） ※サンプルは全体のバランスを踏まえて評価の時間を設定したものです。指導書の年間評価計画と一致はしておりません。 　『NEW HORIZON Elementary』は各学年8 Unitで構成されていますので，1学期にUnit 1～3， 2学期にUnit 4～6，3学期にUnit 7～8 を学ぶと想定しています。また，各Unit（単元）がそれぞれ8つの Lessonで構成されていますので，表中の数字（黒文字）はUnitの何時間目に記録に残す評価をするかを示しています。 　各学期の下にある数字（青字）はその学期で3観点それぞれ，何回記録に残す評価をするかを示しています。3観点のいずれかで数字が0になってしまうと，その観点の評定根拠がなくなりますので注意が必要です。 　右にある小さな表中の数字（赤字）は，年間で15項目の評価を何度するかということを示しています。この15スロットのどれかが0になると，その項目は評価していないことになるので，これも注意が必要です。 　今回のサンプルはあくまでもサンプルです。『NEW HORIZON Elementary』は各Unitに学ぶべき資質・能力や領域がまんべんなくちりばめられており，例えばUnit 1では話すこと（発表）だけについて学び評価する，というような極端な形にはなっていません。また，読むこと・書くことについては形成的評価の側面を重視するため，指導書ではどの時間に評価するかについては明記されていません。これらを考えると，私たちが年間評価計画を作る際には，「学校の実情に合わせて」年間評価計画を作り込んでいく必要があります。その際，以下の点を念頭に置かれるといいでしょう。 ・Unitの最初から記録に残す評価はせず，児童がある程度できるようになってから評価する。 ・主体的に学習に取り組む態度の評価は，知識・技能，あるいは思考・判断・表現の評価と同じ時間に行う。 ・特に主体的に学習に取り組む態度については一朝一夕で身につくものではないので，単元の後半で評価する（記録に残す評価自体しない単元もあり得る）。 ・小学校外国語教育はあくまでも音声が中心であることと，児童が身につけていく典型的な技能・領域の順序を考慮し，評価も「聞くこと⇒話すこと⇒書くこと（書き写すこと）⇒読むこと」という大きな流れを作る。（学習指導要領にあるように，小学校での「書くこと」は（選んで）書き写すことに留めるため，「読むこと」の前に置いています。） 　『NEW HORIZON Elementary』 には，学期の終り（Unit 3, 6, 8 の後）にCheck Your Steps というまとめのページが用意されています。ここを上手に活用し，例えばここで確認する内容と関連付けてパフォーマンス・テストなども実施し，評価することなどを考えてもいいように思います。また，児童の見方・考え方の「変化」が見えるような，振り返りカード等の工夫をする必要もあるように思います。 　いずれにしても，今回国立教育政策研究所より示された『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』にあるように，指導と評価の一体化を実現し，児童の学習意欲の向上と教師の授業改善につながるような評価になるよう，心がける必要があります。 　上記の「年間評価計画作成シート」が以下よりダウンロードできますので，ご活用下さい。（青字と赤字の部分は，表に記入すると自動計算されるようになっています） 資料ダウンロード 内容 データ 年間評価計画作成シート